1.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  123  pp.9-18,  2020-03-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/00006999
概要: 「教科書教材の教材文に内在する筆者の思考が,学習活動を通して子どもの思考と表現に転移するのではないか」という仮説のもと,小学校3年生の国語教科書の説明文教材を対象に,教材文に内在する筆者の思考と「学習の手引き」が子どもに求める思考をそれぞれ 調査・分析した。その結果,小学校3年生の説明文教材には,小さな説明過程である段落内(1つの事例)や段落相互(複数の事例)で求められる思考(Ⓐ比較 Ⓑ順序 Ⓒ原因・結果,理由 Ⓓ類別 Ⓔ一般(抽象)・具体),大きな説明過程である「はじめ・中・終わり」の構成で期待される思考(Ⓔ一般(抽象)・具体),更には本文の内容理解を深める思考(Ⓕ類推・推論),活用段階における思考(Ⓖ批判(評価))などの思考が内在することを確認した。 続きを見る
2.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  124  pp.9-18,  2020-10-30.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/00007179
概要:  国語科教育における「比較」とはどんな思考であるのか,また「比較」という思考に系統性・階層性はあるかについて,櫻本明美の研究,教育的認識論,レトリック論,文章構成法をもとに検討した。国語科教育における「比較」とは,「比べること」という基礎的 概念としての選択的思考は日常生活と同じであるものの,国語科という言葉に関わる教科特性から「比べること」は,対比・類比や選択,分類,分化という要素があると細分化できた。特に,分化という要素は,対比・類比や選択,分類をもとに,「比べて考える」「比べて理由を考える」といった推論的思考や因果の思考の入り口となる思考であると捉えた。 続きを見る
3.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  125  pp.7-17,  2021-03-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/00007324
概要:  本稿では小学校就学前教育における図書教材に視点をあて,その実態調査を行うとともに,図書教材に関わる幼保小連携の在り方について考察した。弘前大学教育学部附属幼稚園の図書教材の実態として,主に3点のことが言える。1点目として図書教材の総数から は,保育室全体の傾向としてお話や科学的読み物,雑誌が多いが,図書コーナーでは圧倒的にお話が多い。2点目として本棚に配置された表紙が見える図書教材の傾向として,各保育室には幼児の実態や発達を踏まえた図書教材が並べられている。特に5歳児保育室では,小学校入学を見据えた図書教材も見られる。3点目として小学校低学年の読みの学習で教材文として扱うお話の半分近くが,附属幼稚園の図書教材として配置されている。そのお話の中から「おおきなかぶ」について附属幼稚園の幼児に聞き取り調査を行ったところ,「知っている」と答えた幼児は全体の約半数に及んだ。このことは他園の幼児においても小学校で学習する時,「おおきなかぶ」は「知っているお話」の可能性がある。確かに低学年読みの学習において,子どもの学習環境の変化,また「話しことば」から「書きことば」といった学ぶ言語形態の変化に伴う戸惑いなどから,「知っているお話」は子どもに心理的安心感をもたせる可能性がある。一方,これまで短時間で「ストーリー(出来事)」を楽しんできた就学時前教育と,数時間かけて言葉に立ち止まったり言葉の使い分けに気付いたりなど「言葉」そのものに着目する小学校読みの学習との間には,「知っているお話」がゆえに同じお話の扱いに対するギャップがある。そのギャップをどのように埋めていくかの吟味が小学校教育,小学校就学時前教育の双方にとって必要となるとともに,幼保小連携の在り方を考える一つの視点ともなる。 続きを見る
4.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報.  2  pp.1-10,  2020-03-19.  弘前大学大学院教育学研究科
URL: http://hdl.handle.net/10129/00007224
概要:  本稿の目的は,「言葉による見方・考え方」を働かせた国語授業とはどんな授業であるかを児童言語研究会の「関係づける」読みに着目し,その理論と説明的文章指導の実践例をもとに考察することである。児童言語研究会の「関係づける」読みは二つに大別される 。一つ目は「文法的要素としての関係づけ」であり,読みの授業の下支えとなる基礎的部分における読みである。二つ目は「思考要素としての関係づけ」であり,読みを深める・広げることに作用する活用的部分での読みであった。また,この二つの「関係づける」読みは,授業において相互補完的にも機能することから,確かな読みの方向へと導く。児童言語研究会の「関係づける」読みは,「言葉による見方・考え方」を働かせた説明的文章指導にとって,特に留意すべき読みの視点であると言える。 続きを見る
5.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報.  3  pp.1-12,  2021-03-24.  弘前大学大学院教育学研究科
URL: http://hdl.handle.net/10129/00007353
概要:  国語科説明的文章学習において,(仮想の教師の役割をもつ)教科書の「学習の手引き」及び教科書会社発行の指導書が,読者(学習者)に習得することを期待する比較の姿を,筆者(テキスト)に内在する思考(比較)と読者(学習者)の思考(比較)の道筋を仮 説的な視点として設定し,小学4年説明的文章「アップとルーズで伝える」で検討した。その結果,段落相互の関係など筆者(テキスト)の思考を考える習得段階の場合,対比・類比や選択,分類,分化という比較を期待していること,自己や他者との関わりといった読者(学習者)としての視点を重視した活用段階の場合,比較をもとに類推といった推論的思考へと導かれていくことがわかった。また国語科説明的文章学習において,筆者(テキスト)と読者(学習者)を媒介する教師(本稿では「学習の手引き」及び教科書会社の指導書の展開例をもとにした)の働きかけによって,筆者(テキスト)の思考が読者(学習者)の思考へと転移する可能性があることが改めて浮かび上がった。 続きを見る
6.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  126  pp.9-20,  2021-10-25.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/00007563
概要:  本稿では,低学年説明的文章における内容(情報)を「形態」と「機能」という視点で捉えることができるか検討した。その結果,「形態」と「機能」という視点でおおよそ捉えることができ,かつ「形態」と「機能」という視点から〈形式面〉,〈内容面〉,〈形 式・内容の双方に関わること〉,〈その他〉の4観点に細分化することができた。〈形式面〉として,①低学年の説明文(説明的文章)は,おおよそ「形態」と「機能」の視点で捉えることができる。特に1年入門期に,「形態→機能」型の説明文が多いことから,「形態→機能」型は説明文の基本的な内容配列の形と捉えることができる。また「機能→形態」は見られるものの,わずかであった。②「形態→機能」型の中には,「形態・機能→形態・機能」など,「形態→機能」型が変化した形が見られた。説明の精度を高める内容配列としての型である。〈内容面〉として,①「形態」が具体的な「形」から,「内容」といった目にははっきり見えないものに変化している説明文が見られた。「形態」そのものの抽象度が高くなっており,子どもの発達に即して,説明内容の質的レベルが上がったものと考えられる。②「事柄や現象の主たる状況」(主たる説明)→「事柄や状況の細部にわたる説明」(従たる説明)という形が見られた。これも「形態→機能」型が基となっているが,「形態」と「機能」それぞれの質的レベルが上がっていることによる。〈内容・形式の双方に関わること〉として,「さけが大きくなるまで」「ビーバーの大工事」に見られるように,「形態」と「機能」の関係だけでは捉えにくい教材もある。「機能」を子どもに考えさせるためと捉えることもできるし,「事柄や現象の主たる状況」(主たる説明)→「事柄や現象の細部にわたる説明」(従たる説明)とも考えられる。〈その他〉として,本文に示された「問い」がその後の内容(情報)を規定していることから,「形態」と「機能」の関係だけでなく,「問い」にも目を向ける必要があることが改めて確認できた。 続きを見る
7.

論文

論文
大谷, 伸治 ; 桐村, 豪文 ; 越村, 康英 ; 櫻庭, 卓也 ; 清水, 稔 ; 田中, 拓郎 ; 森本, 洋介
出版情報: クロスロード : 弘前大学教育学部研究紀要.  26  pp.33-43,  2022-03-24.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/00007813
概要: 本稿は,新型コロナウイルス感染症流行下(コロナ禍)において実施した2020・21年度「学校生活体験実習Ⅰ(小学校)」( 2 年次夏期集中・選択)の報告である。コロナ禍で参加・支援ができず,観察のみの実習となってしまったものの, 3 年次「T uesday実習(前期)」の内容を一部前倒ししつつも,いくつか生活体験実習のよさを残して,2 年次実習としての固有の意義をもたせた省察重視のプログラムを策定した。結果,学生たちは省察のおもしろさや奥深さを実感するとともに,子ども一人ひとりをよく見る大切さに気付き,子ども観・教職観・授業観に変容が見られた。また,授業づくりの前提として,子どもたち一人ひとりが安心して学び合える雰囲気づくりの大切さに気付くとともに,そのような「聴き合う関係」を教室に成立させるものとして,授業内外における「生活指導」に着目し,「教師=学びの演出家」であることを見出した。 続きを見る
8.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  127  pp.9-21,  2022-03-29.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/00007827
概要: 本研究は,小学校国語科入門期説明的文章と就学時前教育段階において子どもが触れる科学絵本『かがくのとも』に収録された文章との比較を通して,読者である学習者からみた系統性や関連性について考察することにより,「言葉」に関わる継ぎ目のない指導のあり 方について検討を行うものである。結果として次のことが確認できた。1点目は双方の教材・作品に関わる目的の違いからくる「構成」の違いである。国語科入門期説明的文章は事象や現象について論理的に説明することを目的とするため,特に本論部の「構成」を重視し,繰り返し複数の事例を用いて「構成」の定着を図ろうとしている。一方『かがくのとも』は,絵本という性質からストーリー性を重視し,1つの話題を時間的順序や空間的順序などに基づき「構成」していることが多い。2点目は「展開」である。入門期説明的文章は,問題提示・解明の展開が多く,続いて話題提示・解明となる。問題や話題を「解明」しようとするのである。一方『かがくのとも』は,話題提示・解説が多く,続いて問題提示・解説となる。話題や問題などを「解説」する展開が多く見られた。入門期説明的文章は「解明」であったが,『かがくのとも』は「解説」が多く,ここに違いが見られた。また,この「解説」から「解明」へと変化する過程には,言葉の指導の面からみて系統性や関連性を見出すことができる。さらに小学校中学年段階ごろに身に付くとされる説明文スキーマの原型にあたる可能性がある。3点目は「挿絵」(非連続テキスト)である。入門期説明的文章学習では文章そのものの理解が目的となるため,挿絵は文章を理解するための補助的資料となる。一方『かがくのとも』は絵本であることから,挿絵が主役であり文章は挿絵を説明するための位置づけとなる。しかし,就学時前教育段階との継ぎ目のない「言葉の学習」を目指す視点から,特に入門期説明的文章学習においては,挿絵を文章と同等に重要視して指導にあたることが肝要となる。さらに付言すれば,入門期説明的文章指導は得てして「内容」(事柄や現象)理解に視点をあてることが多いが,就学時前教育段階において文章の「構成」や「展開」につながる豊かな学びの素地を密かに学んでいることを小学校の指導者が理解しておくこと,また上記に関して指導者・保育者の双方が認識することが,更なる連携の強化に結び付くのである。 続きを見る
9.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  128  pp.7-18,  2022-10-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/00008048
概要: 本研究は、国語科説明的文章指導における「言葉による課題解決力」を育成するために、どんな指導を構想すべきなのかについて、課題解決学習の先駆的取組みが見られた読み書き関連指導と情報活用指導に学び、その視点を考察した。 視点として2点見出すことが できた。1点目は、「言葉による課題解決学習」において学習者( 読者) が言葉に対するメタ認知を働かせるような指導を構想すること。そのためには、国語科は「言語教材をもとに、言語活動を通して言語能力を身に付ける」教科であることの認識を教師自身がさらに深め指導にあたること。2点目は、学習者( 読者) の言語能力が身に付く単元構成の在り方を構想すること。そのためには、学習課題や言語活動の質が重要となること。以上の2点を踏まえ、「言葉による課題解決力」の育成を図っていくことが求められる。 続きを見る
10.

論文

論文
田中, 拓郎
出版情報: 弘前大学教育学部附属教育実践総合センター研究員紀要.  7  pp.1-11,  2009-03-31.  弘前大学教育学部附属教育実践総合センター
URL: http://hdl.handle.net/10129/00008004
概要: 読みの学習において, 子どもは学習したことを理解し, さらには自分のものとして身につけるという前提で授業が進められている。別の言葉で言えば, 学習したことは子どもに「転移する」という前提で行われている。さらにその「学習の転移」に私達は即効性 も求めている。ところで当たり前に使われる「学習の転移」であるが, 国語科教育における言葉の概念規定がはっきりしていない。そこで先行論文を調査し, 国語科教育における「転移」の考えを探った。先行論文をみる観点として, 学習心理学で使われている「知識・技能の転移」,「学習方法の転移」,「思考力の転移」の3つの観点と稿者が新たに設定した「関心・意欲の転移」という4つの観点で考察した。その結果, 文章構成や文末表現, 指示語などは「知識・技能の転移」として, 読みの視点といった学習の仕方に関わるものは「学習方法の転移」として, さらに考える力といったものは「思考力の転移」として認識されていた。そして学習内容・学習事項を達成する情意的な力として「関心・意欲の転移」が考えられていた。「関心・意欲の転移」は他の3つの観点とは異なりそれだけが転移するとはいい難いが, 他の3つの転移を支える大きな要素であることがわかった。ただし, 国語科教育における「転移」という言葉があまり使われていないことを考えると,「転移」ではなく別の言葉で使われている可能性がある。また「関心・意欲の転移」の実証が弱いところも否めない。今後の課題としたい。 続きを見る