1.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.65-71,  2002-10-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/585
概要: 本稿は近代音楽史学の礎となったJ.ホ-キンズとC. バーニーの『音楽通史』に関して,特に18世紀の各国の音楽に対する両者の見解を比較検討するものである。その結果,明らかとなったのは,ホ-キンズの保守的音楽観とバーニーの進歩的音楽観の相違であ る。すなわち,バーニーは大陸音楽紀行の成果をふまえ,18世紀の新しい潮流を視野に入れて各国の音楽をとらえているのに対し,ホ-キンズは斬新な音楽よりも,コレツリやジェミニア-ニに代表される古典様式の音楽に音楽発展の完成をみていた。ホ-キンズが『通史』で示した古楽復興-の強い関心は,彼の保守的姿勢のあらわれであり,彼はその中に,音楽のアマチュアリズムの確立と,古典的趣味の育成を求めていたといえよう。 続きを見る
2.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.87-94,  2003-10-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/586
概要: 本稿は, ドイツのジングシュピールの創始者,∫.A.ヒラー(1728-1804)の歌唱教育書『装飾歌唱法(Anweisungzum musikalisch-zierlichenGesange)』(1780)を取り上げ,彼の歌唱教育の実際と, 18世紀後半の音楽美学や演奏習慣を明らかにするものである。ここでは主に,序文における執筆意図, 3つの演奏様式,歌詞と音楽の関係,装飾の実際について検討する。その結果,ヒラーには室内様式の華麗化や教会音楽の世俗化を容認する新しい様式観や, ドイツプロテスタントの復興を目ざした合唱音楽-の強い関心と女声の活用など新しい変化が見られる。本書には,P.F.トージやJ.F.アグリコーラによる18世紀の伝統的歌唱法の成果と,19世紀に向けて新しい方向を模索する傾向が入り混じる,過渡的な特徴が認められる。 続きを見る
3.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.65-70,  2004-10-15.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/587
概要: 本稿では,イギリスの音楽史家C.バーニーによる『ヘンデル略伝』をとり上げ,その特質を明らかにした.本書は-ンデルの生誕100年,没後25年を記念する歴史的な大コンサートに関する報告書『ヘンデル記念演奏会報告』(1785)に含まれる-ンデルの 略伝であり,著者のバーニーは,この歴史的なイヴェントの公的な記録者として国王より依頼を受けた。-ンデルの伝記としては,彼のなくなった翌年,匿名で出版されたJ.マナリングによる『-ンデル回想録』(1760)が最も早い。バーニーはマナリングの記述に依拠しつつ,ヘンデルの渡英前のハンブルク時代の活躍を新たに明らかにし,また,自身の若い項のヘンデルとの交流体験をふまえて,巨匠の晩年の姿を浮き彫りにしている。 続きを見る
4.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.29-36,  2005-10-07.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/588
概要: ヨーロッパの他の国よりも1世紀先駆けて始まったイギリスの古楽復興運動は,17世紀半ばの王政復古をきっかけに芽ばえた愛国心と自国文化再興への気運を背景に生まれた。その目的は,18世紀の政治的,社会的変動に伴う人々の趣味の低俗化に対する古典的規 範の確立を目ざすものである。本論では,18世紀の古楽復興の代表的音楽組織,「古楽アカデミー」とこれを継承する世紀末の「古楽コンサート」をとりあげ,主にレパートリーから窺えるコンサートの特徴を検証し,また当時のイギリスで古典的地位を確立したコレッリとパーセルの受容状況,同時代の音楽史家,ホ-キンズバーニーの古楽観もあわせて検討した。 続きを見る
5.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.33-38,  2009-10-30.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/3374
概要:  L. メーソン(1792-1872)は、ペスタロッチ式音楽教育のアメリカにおける確立者であり、彼の代表的な歌唱教科書、『ペスタロッチ式声楽教育のためのボストン音楽アカデミーの手引』(1834)は、近代音楽教育の原典ともいわれる。本稿では、 彼のヨーロッパ音楽に対する広範な知識のもととなった彼の大陸旅行に着目し、その見聞録『海外音楽便り』(1853)を検証し、宗教音楽、コンサート、音楽祭などの記述から、当時のヨーロッパの音楽事情とメーソンの音楽観を明らかにする。これらの中から、彼の厳格な音楽教育者として、また敬虔な宗教家としての側面が浮き彫りにされ、さらにやや古風で穏健な音楽趣味、アメリカにおける音楽文化向上への強い意欲も明らかとなった。 続きを見る
6.

論文

論文
今井, 民子 ; 笹森, 建英
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.29-53,  1991-10-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/573
概要: ヴァイオリン音楽の発展を可能にした背景には,17世紀から18世紀の楽器製作の改良,演奏技術の確立があった。この論文では,先ず楽器製作の変遷を概観する。この時代の演奏技術の確立を把握する上で重要なのは,器楽形式の発展と,一連の技法書の出版,技 巧を駆使して葵すカブリスの類の作品の出現である。レオボルト・モーツァルトMozart, Johann GeorgLeopoldやジェミニア一二Geminiani,FrancescoSverioの奏法に関する著書,ロカテッリLocatelli,PietroAntonioのカブリスは重要な役割をはたした。この論文では,彼らによって掲示された技法を具体的に考察する。20世紀,特に1945年以降は,音楽様式,演奏法が画期的な変貌を遂げた。その技法上の特質を明らかにする.これらを踏まえて,音楽文化が新芽し,形成され,さらに発展,変遷していく過程に教育書がどのような役割を果たすのかについても検証する。 続きを見る
7.

論文

論文
今井, 民子 ; 笹森, 建英
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.45-63,  1992-03-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/574
概要: 音楽教育において,「身体表現」はリズム教育の効果的方法として,欠かすことのできない重要なものであると考えられている。小学校学習指導要領の表現の項目には「拍の流れやフレーズを感じ取って,演奏したり身体表現したりすること」(1- 4学年),「拍 の流れやフレーズを感じ取って,強弱や速度の変化に応じた演奏をしたり,身体表現をしたりすること」(5,6学年)とうたわれている。また1,2学年の鑑賞の項目においても,教材は「日常の活動や経験に関連して親しみやすく,身体反応の快さを感じ取ることができる楽曲」とある(小学校学習指導要領,傍点筆者)。しかし,現在の音楽教育では,このような身体表現が十分生かされているとはいえず,教材や指導点の点で検討を要する点が少なくない。その原因の一つは,明治の唱歌遊戯以来,20世紀のダルクローズ,オルフに至るまで,日本のリズム教育が外来のものを拠りどころとしたことにある。本稿は,明治後期の唱歌遊戯の特質と問題点をさぐり,また,冒本のわらべ歌のリズム,日本舞踊の表現にも目を向けた上で,舞踊と音楽の関係について美学的,民族音楽学的考察を加えたものである。 続きを見る
8.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.47-57,  1992-11-30.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/575
概要: 18世紀オペラには,ルソーの自然思想を反映して,宮廷の虚飾を批判し,素朴な田園生活を讃えるものが少なくない。本稿は,ルソーの自然思想が18世紀オペラに与えた影響を検証したものである。まず,彼の自然思想の本質を主著の「人間不平等起源論」と「エ ミール」に探り,和声を排し旋律を重視するそのユニークな音楽論が,彼の自然思想の音楽的適用であることを確認し,その思想を具体化したオペラ(村の占師)を検討した。次に,彼の田園讃美のオペラが,フアヴァ-ルを中心とするオペラ・コミックを経て, ドイツのジングシュピールに波及する経緯を明らかにした。 続きを見る
9.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.69-80,  1993-03-30.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/576
概要: わらべうた,即ち伝承の歌遊びは,古くはフレーベル,今世紀のオルフ,コーダィ,また日本では小泉文夫により音楽教育に活用されてきた。わらべうたはどの民族にも存在するが,外国のものについてはわずかな紹介があるにすぎない。今後は,世界的規模でわらべ うたを考える必要があろう。本稿では,欧米の歌遊びの中でも中心的な鬼遊びをとりあげ検討した。この遊びは,特定の隊形と充実した歌詞を持ち,民族性を最も強く反映している。日本と欧米の鬼遊びの大きな相違は,欧米に顕著な恋愛,結婚のゲームが日本には全く見られないことである。これは,双方の恋愛や結婚に対する意識の相違に起因するものである。 続きを見る
10.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.95-105,  1993-07-20.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/577
概要: 本稿は,ラモーの和声理論の特質と後継者たちによるその後の和声理論の展開を検証したものである。まず,初期の画期的な理論書、「Traite de l'harmoie」以来,彼が生涯にわたり追求したその和声理論の基本的概念を概観した。ここでは,根 音バスとその転回を中心に,和音の生成,オクターブの同一性,Suppositionなどをとりあげ,さらに根音バスの概念確立に彼が大きな示唆を得た通奏低音法の規則である「オクターブの法則」についても述べた。次に当時のドイツの通奏低音法とラモーの和声理論を比較し,両者の本質的相違を明らかにした。最後にラモーの後継者たちによる和声理論の展開として,キルンベルガーとマールプルクの理論を中心にとりあげた。彼らは,不協和音をより明確に理論づけ(本有的不協和音と偶有的不協和音),ラモーにおいて不十分であった高次のレヴェルからの和声分析を確立し,これはその後の和声分析のモデルとなった。 続きを見る
11.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.21-27,  1994-10-03.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/578
概要: 本稿は,B.Marcelloの『当世風劇場(ⅠITeatroallaModa)』を検討し,18世紀のオペラ上演の実態を明らかにしたものである。バロックの初期に成立以来,発展を続けてきたオペラ芸術も,18世紀に入ると矛盾が現われはじめ,凋落の 兆しが見えてきた。当時数多く書かれたオペラ批判の中で,B.Marcelloの『当世風劇場』は最も名高い。これは,あらゆるオペラ関係者に対する有益な助言と題し,彼らにオペラ成功の秘訣として無知と強欲をといた詞刺的オペラ論である。B.マルチェッロが厳しく批判するように,バロックオペラを荒廃させた主な原因は,歌手の声の曲芸と舞台の精巧な機械仕掛けへの過度の要求であった。この傾向は,一般の聴衆に公開され,商業的性格の強いヴェネツィア・オペラでは特に顕著だった。B.マルチェッロの記述には,多分に誇張があるにせよ,このオペラ論からは,当時のスターシステムの弊害が生んだ危機的なオペラ状況が理解できる。 続きを見る
12.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.49-56,  1996-10-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/579
概要: ルソーの共鳴者であるイギリスの音楽史家,C.バーニーは,彼の幕合オペラ『村の占師Ledeviれduvillage』を翻訳し,『知恵者TheCunningMan』として上演した。本稿では,まず,当時の音楽界を二分したフランス,イタリア音楽の優 劣をめぐる「ブフォン論争」を概観し,イタリア派としてのバーニーの立場を検討する。次に翻訳オペラF知恵者』の成立事情とその反響,及びバーニーとルソーとの親交にふれ,最後に両者のオペラを比較分析する。その結果,バーニーの翻訳オペラは,ルソーの原作に概ね忠実に倣いながらも,ルソーの愛したフランス伝統のオペラ手法を排した,より強いイタリア趣味が認められた。 続きを見る
13.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.57-61,  1997-03-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/580
概要: C.Burney(1726-1814)の生涯最大の業績は,いうまでもなく『音楽通史』の執筆であろう。しかし,彼は18世紀の啓蒙知識人にふさわしく,音楽史家としてだけではなく作曲,演奏,教育など音楽の多方面で活躍した。本稿では,彼の音楽教育者 としての活動を検証する。まず,18世紀イギリスの音楽教育の現状を,宗教改革,産業革命という二大社会現象との関連から概観し,当時の音楽教育への需要の高まりを明らかにする。次に,C.バーニーが生涯続けた音楽の個人教授の実際に目を向け,最後に,彼が提案した,イギリス初の公立音楽学校設立の計画についてふれる。彼の長年にわたる音楽の個人教授と,音楽の専門教育機関設立の運動は,イギリス国民の教化とその音楽文化の振興を目ざしたものであり,音楽教育者として果した彼の功績は大いに評価しなければならない。 続きを見る
14.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: pp.65-71,  1997-10-31.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/581
概要: イギリスの音楽史家,Cノヤーニーの『ヨーロッパ音楽紀行』は,主著である『音楽通史』執筆の資料収集を目的に企てた大陸旅行の見聞録である。本稿では,この旅行記に基づき,彼が見聞した教会,劇場,私的コンサートにおける音楽活動の実態と,その他,大道 の音楽,楽器,楽譜について,主にイタリアを中心に検討する。まず,イタリアの教会音楽では,世俗化の著しい祝日の音楽と,平日の素朴で古風な聖歌との対照が指摘される。オペラ劇場では,貴族と一般市民からなる聴衆,音楽家の生活支援のための劇場コンサートが,また,私的コンサートでは,教養豊かなディレッタントによる良質のコンサート(アッカデーミア)の様子が言及される。バロックの教会,劇場,室内という音楽様式の3つの区分はあいまい化し,相互の融合,類似化が窺える。その他,野趣に富む大道の民謡,後年,『音楽通史』に結実する楽器や楽譜の資料収集に関する記述がある。 続きを見る
15.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.29-36,  1998-10-30.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/582
概要: 本稿では,第2次ブフォン論争といわれるグルック-ピッチンニ論争の本質を明らかにするため,ピッチン二派のマルモンテル,グルック派のアルプ,中立派のシャバノンの論考,及びこの論争とは無縁であったモーツァルトのオペラ論を検証する。古典主義の立場か らグルックの表現を激しすぎると退けるマルモンテルは,同時にイタリア音楽の声楽美の濫用にも批判の目を向け,一方アルプは,グルックのオペラ改革の成果を評価しつつ,深い感動を誘うピッチンニオペラの魅力も認める。また,旋律と和声をともに認めるシャバノンの見解は,ルソーとラモー以来の旋律・和声論争に終止符を打つものとして注目される。イタリア派の一人として,音楽の詩に対する優位を主張するモーツァルトは,グルックとは対極のオペラ作曲家といえる。これらの見解は,18世紀音楽の中心主題であったイタリア音楽対フランス音楽,旋律対和声の問題の終悪を意味するものといえよう。 続きを見る
16.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.55-63,  1999-03-30.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/583
概要: 1728年,ロンドンのリンカーンズ・イン・フィールズ劇場で上演されたJ.ゲイの≪乞食オペラ≫ は,18世紀イギリスのバラッド・オペラの最初のものとして画期的な作品である。本稿は≪乞食オペラ≫ をテキストと音楽の両面から検討し,その特質を明ら かにするものである。まず,バラッド・オペラが誕生するまでのイギリスオペラの変遷を概観し,バラッド・オペラが18世紀初頭のイタリアオペラの急激な進出に対抗する,イギリス固有の,かつ庶民の活気あふれるオペラとして誕生した経緯を述べる。テキストに関しては,著者J.ゲイの主張する思想,及びオペラの冒頭と末尾の乞食と役者による対話に表明されたゲイのオペラ手法を明らかにする。楽曲では,既成の作品を再構成するバラッド・オペラの作曲が,創造力よりも豊かな学識にすぐれた作曲者J.Chr.ペブシュにいかにもふさわしかったこと,及びオペラに用いられた多数のバラッドの特徴について述べる。 続きを見る
17.

論文

論文
今井, 民子
出版情報: 弘前大学教育学部紀要.  pp.81-86,  1999-10-20.  弘前大学教育学部
URL: http://hdl.handle.net/10129/584
概要: 本稿では,『音楽の学と実践の通史』(1776)の著者,J.ホ-キンズ(1719-89)をとりあげ,その生涯の多面的な活躍と『通史』成立の事情をさぐり,さらに,ホ-キンズが『通史』で詳述した3人の音楽家,T.ブリトン,J.C.ペブシュ,J.イ ミンズの功績を検討する。ホ-キンズが強い共感を寄せた3人の音楽家の市民コンサートの主宰者,すぐれた音楽の収集家としての活躍と,古楽尊重の視点は,音楽の専門家で同時代の音楽に目を向けたC.バーニーと根本的に異なるものといえよう。 続きを見る